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カーネーション『ジェイソン』

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 きっと死ぬまで言い続けるけど、おれにとってカーネーションは精神安定薬なのだ。それは直枝さんが描く歌詞の遠近感、鋼のごときポジティブネスに自らを重ね合わせたときに効能を発揮する。おれだって人間風車だぜ。ぐるぐるぐるまわるぜ。良薬口に苦しというが、カーネーションは、その歌声と絶妙のコードワークが渾然一体となった、実に美味なる薬だ。26年煮込んだ出汁がきいている。一朝一夕には作れない味だ。最近の若者はよく「アガる」「サガる」とか言うけれども、カーネーションはおれを20年アゲ続けている。

 これほどのカリスマ・シェフであり辣腕薬剤師ならば、現状のスキルの切り売りで満足しそうなものだ。しかし、新曲「ジェイソン」の長いインタールードを聴いてほしい。カーネーションはロック・バンドとしての進化を止めない。世界一信頼すべきドラマー=矢部浩志さんが「神経の麻痺による手足のコントロール不能」を伴うおそらく腰椎の持病の治療に専念。とうとうカーネーションは直枝さん&大田さんのデュオになった。「大丈夫だ」「何も変わらない」と言うのは、矢部さんにも新加入のサポートドラマー=中原由貴さんにも失礼な話だ。カーネーションは成長を止めない。確実に進化している。加齢とともにメンバーが減り、新たに事務所とレーベルを立ち上げるという客観的にはどう考えても逆境といわざるをえない状況で、この疾走感、熱くて爽快なアンサンブルは何なんだ。9ミリ・パラベラム・バレットとか残響レコードとかRADWIMPSとか聴いている若者たちだって、この曲のテンションには打ち震えるだろう。これでアガらないやつはロックを聴く資格がない。

 ロックとはカーネーションのことだ。カーネーションこそがロックなのだ。つまり、何度も言っているのだが、カーネーションが参加しないロック・フェスはすべて軽音楽まつりと呼ぶべきなのだ。カーネーションが出演しないならフジロックは「フジ軽音楽まつり」、FKMと改称すべきなのである。

Cosmic Sea Records
2009/04/15発売
by kamekitix | 2009-04-14 01:09