THE FIST

宇波拓さんが主宰するhibari musicのイベントで、伝説のドラマー=久下惠生さんのソロ・ライブがあるということで「これは絶対行かねばならない」と直感したので明大前まで見に行きました。

ギャラリーの2Fから手すりや床を叩きながら登場。懐かしい。デヴィッド・ヴァン・ティーゲムやん。

フロアに下りてきても、なかなかドラムセットを使わない久下さん。用意されたバケツや風呂の蓋を叩いたり投げ捨てたり踏んだりして音を出す。基本的なビートは足首に結ばれた鈴が刻む。

前半の白眉は、おもむろに向かった事務用デスクで小さなノートにスタンプを押し始めたところ。スタンプ台にスタンプを叩きつける音、ノートをめくる音、捺印する音が凄い勢いになっていくグルーヴ。

以前、どこかに書いたことがあるんだけど、職安へ大量に離職票を持って行く仕事をしていた頃、大阪西職安に一人ものすごくリズミカルなスタンプ押しを披露してくれる職員さんがいたっけ。彼がスタンプ押し始めると「ビヨンセの新曲のイントロってこんな感じかな」と思ったものだ。そんなことを思い出した。

後半はハイハット、スネア、バスドラを使ったセット。岸和田のだんじりを模った風船を一生懸命膨らませる久下さん。めまいがするほど肺活量を使って膨らませたが、特に何に使うわけでもない。緊張と弛緩。まぁ、一般的にこう、いわゆる「盛り上がってきた感じ」のところでフッとやめてしまう天邪鬼な感じ。突然出入口のほうを見てハッとして演奏をやめて会場を走って出て行き、2分ぐらいして「失礼しました」と言って戻ってきて、さっきのフレーズでドラムを叩き始めるキチガイっぷり。

終盤、爆音になって、スネアを跳ね返すスティックの音がナチュラルなダブ・エフェクトに聞こえて、それもすごく強烈な体験だった。完全に生音なのに、エレクトリックだった。

豊田道倫くんが「昔、大阪で山本精一さんのユニット“神”を見たのを思い出した」と言っていた。ギャラリーでパフォーマンスを見るということが久しぶりだ。確かに15年ぐらい前に大阪のカラビンカというスペースで見た山本精一さんのソロ・パフォーマンスみたいな緊迫感があった。
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当日買った久下さんの2nd.アルバム『THE FIST/YOSHIO KUGE』はドラムセットを一切使っていないというドラマーのソロ作としては実験的な作品。どんな音でも音楽になりうる。これは究極のアンビエント・ミュージックであり、定期的に誰かが提唱しないといけないことだ。「どんな音でも音楽になりうる」=「どんな音楽も音になりうる」ということだな。「この世に意味のない事象はひとつもない」というのと「この世はすべて無意味だ」というのは同義か。すべての事象は音を伴うか。そんな深遠なテーマをファンタジックに記録したのがこのアルバムだ。人力エレクトロニカ、略してヒトロニカとでも呼ぶべきだろうか。

12月29日の渋谷O-nestでの「豊田道倫with昆虫キッズ」のライブについては、書くべき言葉が見つからないので、何も書かない。レポートとか反芻とか不要でしょう。あの場にいた人たちが経験したことがすべて。とにかく最高にエキサイティングで、幸せな夜だった。 熊谷耕自くんによる写真を一枚だけ。
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夜更けになって打ち上げへフラリと現れたいかにも自称酔いどれ吟遊詩人みたいな男が実につまらなくて、胡散臭くて、あまりにも臭いので帰りました。あと15分ぐらいあの席にいたら「ハッキリしゃべれよ」と言って殴っていたかも知れないので、帰って良かったです。

1997年2月2日、新宿LOFTでのミルク・ティーンズ。パラダイス・ガラージのアンコールで出演したときの音源を保管していたイガワさんからCD-Rでもらった。13年前の自分の声を自らアップロードしてみました。
最悪のお年玉をどうぞ。
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by kamekitix | 2010-01-01 03:08 | Diary
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