サンタクロースをつかまえて

愛知県に引っ越して三週間。

名古屋のオフィスはインテリジェントで瀟洒なビルだ。人口密度の薄さが心地よい。デスクが広い。明るくて爽やかだ。みんな優しくて温かい。東京の本社は人が多すぎた。

ときどき名鉄に乗って、事務さんが繁忙を極めている岡崎支店に応援に行く。先週、支店長の電動自転車を借りて走ったのは実に素敵な時間だった。地元の女子高生たちと並んで信号待ち。みんな可愛い。焼肉屋でひとりランチ。愛知県の接客のレベルは他県に比して総じて高い。岡崎市を走っていると「岩瀬」という名前が目立つ。岩瀬内科、テーラーいわせ、岩瀬食品。目的地の名古屋法務局岡崎支局でも食堂の名前は「レストランいわせ」だった。

年内に名古屋に戻れるとは思っていなかったので、本当に嬉しい。自分のわがままを聞き入れてくださった上司の皆さんに感謝している。本当に会社をやめるつもりで東海市のハローワークの求人HPをチェックしていた。おれは自分を助けてくれたこの会社で、自分にしかできない仕事をして、名古屋で何らかの成果を上げて、恩返しをしたいと思う。

妻が明け方に寝言をいうのが可愛い。「ムーミンのグラスが欠けちゃった」「カスタネットを叩く夢だよ」などと寝ぼけて言っている。この数年間の単身赴任で聞き逃していた妻の寝言をこれからたくさん聞く。

岩淵弘樹くんの新作「サンタクロースをつかまえて」を観た。

まず麓健一くんの歌声が素晴らしくて、昨年のアルバム『コロニー』を聴き直す。この人の声は季節も風景も選ばず、どんな映画にでも合うのだろう。クリスマスの仙台じゃなくても、夏の江ノ島でも夜の東尋坊でも、麓健一の歌はきっとフィットする。クライマックスでスローモーションを使ったり映像を滲ませたりして感動的なムードを醸す手法と同様に、ドキュメンタリー映画で麓健一を使うのは禁じ手だとさえ思う。またyumboというバンドが実に渋くて、この映画は基本的にyumboのPVとして機能している気がする。はっぴいえんどの曲が一曲、おそらく偶然ラジオから流れた都合で引用されているがあまり効果的な選曲だと思えず、この映画にメジャー感を持たせる宣伝効果しか感じなかった。

岩淵くんはいつも疑問を抱えている人だ。たいていのことに納得していない感じで剣呑な雰囲気を漂わせている。去年ゆっくり話したときに「介護の仕事中に量子力学の哲学について考えている」と言っていた。老人たちの介護をしながらも物質の存在に納得できないのだろう。好戦的な話し方をするときがあるので喧嘩も多いはずだ。いまどき珍しいタイプの若者である。

彼の作風は純粋な疑問をぶつけて結論を模索する過程を撮影し、多くのドキュメンタリーがそうであるように、そこに映り込んでしまった辛気臭いことをいろいろ編集していく。観る者はそこに予期せぬ感動的な何かを発見する/あるいは何ら発見できないこと自体に感動する。

クリスマスとは何か。キリスト教とは何か。死とは、愛とは、普通とは。


「誰かの本当を 知りたい」

という豊田道倫「サマー・ガール」の一節を思う。自己表現を他人と共有するという行為自体。映画を作って多くの他人に観てもらうという営為そのもの。「誰かの本当を知ること」が即ち愛なのかなぁ、とおれは明け方寝言をいう妻の髪を撫でながら思う。


豊田道倫の新しいCDのビデオを岩淵くんが作った。かなり笑える内容だ。これは「サンタクロースをつかまえて」の「おまわりさんこっちですバージョン」と言えよう。出演している林ミカさんはピアノ弾き語りのライブをしてるシンガー。歌っているじゅんじゅんさんは銀杏BOYZのシングルや川島小鳥の写真集のモデルとして有名でMAHOΩというバンドのボーカル。また再始動するya-to-iにも参加しているとか(!)。


ミュージック・マガジンの年間ベスト、歌謡曲/J-POPでトマパイが一位ですと。ずっと応援してたから、嬉しいですね。でも、それを知った日に散開ライヴやってるという複雑な気持ち。あぁ、トマパイはこの複雑な気持ちさえ計画どおりのような。永遠の謎のような。さようならWADAちゃん。不思議な子だった。

みーくんのツイートでダイナソーJr.の新譜の存在を知る。今年出てたのか、知らなかった。すごく良い。

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by kamekitix | 2012-12-30 16:07 | Diary
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