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鏡を見るたびにシミが増えている。首から下のホクロも増殖していて将来的に地肌と交代するのではないかというほどの勢いを感じる。これはいわゆる老人斑というものなのではないか。黒く染めている髪の根元は真っ白だ。陰毛はもちろん、最近は鼻毛にも白いのが混じっている。「残尿感」とか言ってるうちはまだ若いぜ。おれなんかもうはっきり残尿そのものだ。パンツにしまってからちょろりと出る。左の鎖骨と右の肩甲骨がずっと痛くて、これはなんらかの内臓疾患に起因するんだろ、どーせ。なにも飲んでないのに唾液が気管に入ってむせるおれの死因はきっと餅。これ、以前どこかに書いたなあ、どこに書いたか思い出せないけど。

いつも加齢について書くけど決して老けていく自分を悲観しているわけではなくて、むしろ、老成していく肉体とまったく成熟しない精神のギャップを楽しんでいる。相当かわいい爺さんになる自信あるよ、わし。沢尻エリカも「男は40から」と言ってたし「50才以上の男性しか好きになれない」という女子も増えている(ソースは不明)。どうしようモテ期が来たらどうしよう。この話も以前どこかに書いたけど、どこに書いたかはぜったいおもいだせない。

豊田道倫と出会って20年経った。新作CD『44blues』は「まったく成熟しない」という点でおれの20年と符号する。ほんとにこれ2014年に録音したのか。1994年じゃないのか、と思ってしまうのは、インナースリーブに書いてあるとおりTASCAMの4トラMTRで録音したせいもあるのだろう。もちろんマスター媒体はカセットテープ。「100均ショップで売ってた韓国製の物」と記述がある。徹底的にフィジカルでフレッシュなミニ・アルバム。この衝撃は『ハードコア・ライフ』だ。

「雪のミニスカ」。ギターの爪弾きに深くエコーの効いた歌声。イヤフォンで聴くと自分の脈の音と重なるほど静かな曲。町の喧噪が遠くに少し聞こえる。この町の冬を覚えておこう。

「14.2.3」。ショッキングな盗聴もの。史上最強の犬も喰わない系トラック。『グッバイ大阪』における「家族旅行の」や「天気予報」の20年後、と説明すれば往年のファンはわかってくれるだろう。

「44blues」。佐野元春直系のインディヴィジュアルなダンス・トラックは、チコピドが躍り出てきそうな勢いのインスト・スカム。

「not mellow」。サンプリング・ループされた美しいピアノのリフに単音のギターが乗る。アスカ・テンプルに捧げられるかのような、アプローチ。

「love forever」。2003年にリリースされた豊田のインスト・アルバム『アプローチ』がおれは好きなのだ。楽器の定位や音像が彼のアレンジャーとしてのセンスをダイレクトに露呈していて、他のアルバムとは別のスリルや生々しさを愉しめる。いつだって歌詞や声に特徴があるから世評では埋没してしまいがちだけどインストゥルメンタリストとしての豊田道倫はもっと知られるべきだ。この曲も、歪んだビート・トラックに眠ってしまいそうなほどゆったりしたストロークのギターが贅沢に乗っていて、サウンド・プロデューサーとしてのMTの豊かな魅力が剥き出しである。ただ、フォーク・シンガーMTの歌声を聴きたいファンにとっては苦行に他ならないだろう。

「GIRL!!!!!」。タイトルはBUNさんのアルバムのオマージュか。一転してボーカル炸裂の打ち込みスーパー・スラッジ。要するにこの曲もう完全にパラガです。『ROCK'N'ROLL 1500』に収録されていても全然違和感ない。信じられないほどフレッシュ。カードが付いてないので正確に引用できないけど、この歌詞のぶっ飛び方は凄まじい。過去最高の跳躍力に爆笑。

「惑星ブルーウエイ」。少しピッチ上げているのかなと思うほど歌声が若い。ほんとパラガ。20年前に郵送されてきたカセットテープと同じ感触。突然挿入されるライブでお馴染みの曲のサビ。小沢健二がいいともで歌ってたのは「さよならなんて云えないよ」の一節だったな。佐野元春もチコピドもウルトラファッカーズもオザケンも弓場宗治もBUN666も飲み込んだパラガこと豊田道倫の『44blues』。残された倒すべき強敵は、もはや想い出波止場だけかもしれない。
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by kamekitix | 2014-03-23 12:23 | Review
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