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メーカー横断ベスト!!!  カンパニー松尾8時間

「AV30」というシリーズDVDがリリースされている。アダルトビデオ30周年を記念してメーカーを横断して企画されているようだ。2枚組DVDで8時間、パッケージはあえて幅の広いVHSを思わせるサイズで統一されている。

私が学生の頃、アダルトビデオは大きく変化した。深夜に友人の部屋でAVを見ていて「最近の作品は、本当にセックスをしてるんじゃないか」と私が言うと、博識で先鋭的な感性の持ち主である友人が苦笑しながら否定したのだ。「ほんまにセックスしてるわけないやん!そんな映像、犯罪やろ。演技や演技」。26年前の話だ。つまり、時代はまだピンク映画の演技に慣れていて、まさか本当にセックスしているとは信じられない状況だった。その友人は翌年、あるAV女優に夢中になっていた。「ぼくの太陽」という作品で一世を風靡した、かわいさとみだ。こんな美しい少女がカメラの前でセックスしている。その事態に思春期の男子は熱狂した。いつの間にか「AV=本番」ということになっていて、すべて擬似セックスだと思っていた我々は興奮した。「AVって本当にセックスしてるんだ!」という驚異は、それが当たり前の世代にはわからないかもしれない。私は心のどこかに信じられない気持ちがある。「自分のセックスを公開する人が本当にいるのだろうか」という原初的な疑念が十代の自分のモラルに染み付いていて、今でもAVを観ると「うわっ、本当にしてる!」と少年のように興奮する。そう考えると、私は今45才なのですが、幸運な世代なのかも知れない。

これまでリリースされたAV30シリーズで唯一、監督の名前を冠した作品が「メーカー横断ベスト!!!  カンパニー松尾8時間」だ。彼はカメラを持ったまま自分のセックスを撮影する「ハメ撮り」の第一人者だ。彼の見せるすべての情事には、そこに至る偶発的/必然的な過程があり、彼は映像やテロップで、その温もりや儚さ、昂ぶりや哀しさを描写していく。もちろん、その性技と精力がセックスのクオリティを高めているから「単純に劣情を処理するためだけ」にAVを観る人にも有効だ。「カンパニー松尾のAVじゃないとヌケない」というファンがいても不思議ではない中毒性がある。

カンパニー松尾はポルノグラフィにエモーションを吹き込んだ稀代のアーティストだ。彼がいつか死ぬとき、メディアはどんなふうに報じるだろう。その頃にはAVの市民権もさらに大きく変容しているはずだ。おそらく彼の作品はすべてアーカイブとして国立新美術館に展示されるだろう。多くの未来のアーティストが訪れ、彼の描いた究極的な恋愛の映像に震撼するに違いない。どんな私小説よりスイートで、どんな恋愛映画よりもせつなくて、どんなハプニング・アートより衝撃的で、どんな音楽よりロックな、カンパニー松尾の作品は芸術として世界に認められるべきだ。

「AV30」は今後も多くの作品がリリースされるようだ。個人的には白石ひとみ、森川いづみ、杉本ゆみかといった懐かしい顔ぶれの「美少女AVの頂点(90年代セレクション)」、堤さやか、河愛杏里が収録されている「AV女優日本代表 ロリータ☆JAPAN」が興味深い。長瀬愛、穂花/沙雪の名作を収録した「AV30年史 ② 最高にエロいSEX編」も必見だ。つーか、河愛杏里が入ってる段階でこのシリーズは信頼できる。AV30を揃えて、この機会に書斎に隠しているVHSをすべて処分するのもよいかも知れない。

http://www.av30.jp/
by kamekitix | 2012-03-20 21:37