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豊田道倫 & mtvBAND 『FUCKIN’ GREAT VIEW』

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1.「ひとり」
サイケデリックなギターにタイトなドラム。特徴のある歌声。冷牟田くんのコーラス。転調と同時に久下さんのいつものドラムスがエレクトリックなドラム・パッドに。最初の2分間ですでに盛りだくさん。すぐに想起したバンド名は、レッド・クレイヨラ。でもレッド・クレイヨラがこういう音のバンドだったかどうかはわからない。

2.「夜のコーヒー」
宇波くんのベース・ラインがとても優しい。独特のコード展開は、パラダイス・ガラージのカセットテープ作品のころから変わらずスリリング。冷牟田くんの危うい運指のギターと長いアウトロが最高。

3.「オレンジ・ナイト」
シャッフルするビートに弾む歌声。とびきりポップ。この曲も永遠に続きそうなアウトロの、冷牟田くんのリード・ギターの頼りない感じが良い。「街灯なんか何なのか/わからないけど」と歌われるオレンジの光ですが、いや、街灯でしょ。高速道路のトンネルで見かけるオレンジ色の街灯。あいりん地区も夜はオレンジ一色だ。なぜだろう。以下、Yahoo! 知恵袋より。「オレンジ色の街灯はナトリウムランプです。道路にナトリウム灯を使う理由は次のメリットがあります。低圧ナトリウムランプの特徴は、寿命が長く、周囲の温度に左右されにくいうえに、人間の目の明暗の差を見分ける能力を阻害しない(物の凹凸がはっきり見える)という利点があるので、トンネル内の照明にもってこいでした。でも、最近は、高圧ナトリウムランプ(光色:薄い黄)やHf蛍光ランプ(光色:白。店舗やオフィスでの照明に使われている)が徐々に増えているらしいです。この二つは演色性(物の色の見え方)にすぐれ、さらに高圧ナトリウムランプに関しては昆虫が集まりにくいという効果まであるのだそうです。それを利用して果樹園の照明光源をこれにシフトする農家も出始めているとか。しかし、問題はお値段。低圧ナトリウムランプは1球¥7900~程度なんですが、高圧ナトリウムランプはなんと1球¥20000」

4.「26歳」
このアルバムの大きなポイント、久下さんの声芸がご開帳。ボイス・パーカッションっぽくリズムを刻むのが面白くて仕方ないが、最後のほうの小節、とうとう耐え切れずという感じで歌ってしまうところで爆笑。「あつく さめた瞳の26歳」。だれか大事なひとについて歌うとき、豊田はこういうすっとぼけたアレンジをする傾向があるような気がするなぁ。CD-Rを量産してたころのテイストで、得意技。

5.「G」
小倉に流れついた男への憧憬。小倉とか西成とか暴力団が支配している町が好きだな、彼は。北摂という上品な山の手で育った反動かな。ピアノが冷牟田くん。このフレーズを彼に弾かせているMTのディレクターとしての統率力が今回のアルバムの肝かもしれない。

6.「玄米木苺フレークシェイク」
モスバーガーのCMソングを狙ったのか。いまもあるのかな、このシェイク、と思って検索してみると、ずいぶん前に無くなっている。なにか想い出の品なのだろうか。でも想平さんが生まれたころにはもうこのメニューはなかったのではないか。何なんだ。心なしか宇波くんのベースも困惑した感じ。玄米木苺フレークシェイク、とだけ歌って消えていくこの虚無、想い出波止場に肉薄。

7.「ずっとビーチのはしっこで」
3分を超えた終盤でラウドに暴れだす展開。「原子力発電所の近くの……」と冷牟田くんに言わせるセリフも今回のアルバムの肝。冷牟田くんこんなに早口で話せるんだ。ビーチのはしっこでずっとビッチを探してた、という駄洒落は、現代においていまだに本気で「アイムソーリー、ヒゲソーリー」と言える男にだけ許されるフレーズ。

8.「ふたり」
四人で録音しているけど、これは豊田のソロアルバムだなあ、と思ってしまう曲。幼い一人息子が歌詞に登場することによって歌はよりプライベートなものになり、売り物としての間口は狭くなる。ポップではあるがポップスではない。それでも彼は自分にしか歌えない歌を歌う。「来年は弾き語りのアルバムをたくさん出す。三枚組にしたい」と言ってた。友人と嬉しがって「いや、じゃあ半野田拓みたいに五枚組にしよう」「偶数のほうがパッケージしやすいから八枚組がいいよ」などと囃し立てたら「やっぱ二枚組かな」とトーンダウンしたので若い友人が「三枚組って言ってたのに二枚組って何なんすか」と怒った。

9.「Heavenly Drive」
この曲の詩が好きだ。ガセネタを信じたあいつとやせこけた犬とあの子。この三者は、事情は違えど、とにかく朝に消えた。「シューゲイザー」と言われても仕方ないアレンジだけど、同じ視線を落とすにしてもみーくんのシューズはいつも凝ってるぜ。おれ久しぶりにスニーカー替えたんだけどみーくん何も言わなかったな。この曲も冷牟田くんのギターのフレーズがかっこいい。コードやリズムはみーくんでリードは冷牟田くんという分担なのだろう。この曲は彼のキャリアの中でひとつのエポック、というか、もっともわかりやすいMY BLOODY VALENTINEへの目黒からの回答。

10.街の暮らし
最後の曲にしてようやく『m t v』の続編っぽいポップ・ソング。これはサビメロの構成とかすごく凝っているのだろうな。ギターが澤部渡だったらカーネーションみたいになっていたかもしれないが、冷牟田くんが全編突っ走る。これぞmtvBAND。

MTの最近のツイートでいうと「違法だけど今でも気の利いた腕のよい店はレバ刺し出すように歌っていたい」。ルール無視だけど美味しいものは美味しい。生臭いのが嫌いな人は食べられない。豊田道倫=レバ刺し論を証明するアルバム。「禁じ手打ちまくりのポップバンドって想い出波止場以降、本当にない。しょうがないから自分のアルバムばかり聴いてる。ま、自分のは自分が歌うだけで禁じ手だけどさ」というツイートも自覚的だ。「ポップバンド」っていう表現がポイント。豊田道倫の音楽はいつだって圧倒的に「ポップ」ではあるけど「ポップス」には堕落しないんだよね、といういつもの結論に辿り着く。


by kamekitix | 2013-12-31 23:40 | Review
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