Especia 『GUSTO』

アーバンでメロウなシティ・ポップの最高傑作が、この2014年に突然変異的に誕生。
一昨年からクールな楽曲でアイドル界隈を騒然とさせていた噂のEspecia、待望のフル・アルバム!!
早くも2014ベスト盤の呼び声高い『GUSTO』を一曲ずつ聴いてみます。

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1_Intro
シンコペーションの効きまくった70'sフュージョン的なインストにイエイエな女声スキャットが薄く乗る。昔のテレビ番組のテーマ曲みたいで、いまにも司会の今野雄二が躍りだしてきそうな、ファンキーな幕開けの60秒。


2_Bay Blues
「Intro」から一転。ディープなイントロに導かれてEspecia登場。メロウにもほどがあるよと突っ込みたくなる過剰なムーディーさ加減はもはや演歌に近いが、よく聴くと左右で細かく刻まれるカッティング・ギターはダンサブルで、粘っこいベース・ラインは「バブリーなディスコのチーク・タイムってこんな感じだったのかな」と夢想させる。この艶っぽいナンバーを冒頭に据えることでリスナーは焦らされ、ダンサビリティが高揚する。


3_FOOLISH
ブラスとハンド・クラップ。スクラッチでリズムが加熱。J-POPの王道と言うべき「ヒップホップ歌謡」の手法を執りながらまったく下品にならないのは、丁寧に作られたメロディの美しさとボーカル・グループとしての真摯さに因るのだろう。キャッチーなサビメロにさえ気品を感じるし、恩着せがましさを回避する「歌いすぎない感」も、Especiaの旬を思わせる。


4_アバンチュールは銀色に(GUSTO Ver.)
既発のバージョンとはガラリとアレンジが変わった。エレピのイントロがキュートで悶死。多用されるボコーダーとRAH BANDみたいなスペーシーな音色で悩殺。もし今おれが17才なら猿のようにぴょんぴょん跳ね踊るだろうな。1970年から1999年の間にリリースされたかっこいいポップスをせーので同時に鳴らしたら、きっとABBAになると思うのだが、EspeciaはABBAに匹敵する。と言うと、言い過ぎだろうか。


5_Mount Up
印象的なサビメロが半日ぐらい耳に残る佳曲。Especiaにしてはアイドル・コンシャスなアレンジ。管楽器が無いとこんなにアイドルっぽくなるものなのだなーホーン・セクションっておとなのツールだなー、と思う。これはもう完全に東京パフォーマンスドールの名盤『Cha-DANCE PARTY VOL.9 NEVER STOP』(1994)に入ってそうな感じ。TPDは、ファンなら誰もが一家言持つ偉大なグループだったが、私は後期にリリースされたVOL.9が好きだ。


6_BEHIND YOU
再びホーンによるイントロでEspecia真骨頂。やはり全編に左右のキラキラ・ギターが敷き詰められ、トランぺットが裏打ちされていて、歌詞は海辺の街並&シーブリーズ系。これぞEspecia。間奏のサックスもめちゃくちゃかっこいい。


7_嘘つきなアネラ
引き続きトランペットが効いたミディアム・テンポの曲。ピアノが上品かつラグジュアリーなムードを醸している。クレジットを見る限り、コーラスにEspeciaメンバー以外のシンガーが入っているのはこの曲だけのようで、それゆえにサビが濃厚で、全体的に気合いを感じる一曲。


8_Intermission
会社帰りに東心斎橋のガイジン・バーに入ってしまったときの場違い感を思い出させるようなビターかつメロウな、幕間の60秒。


9_No1 Sweeper
往年のマーケティングで言うと「シングル・カット」すべき今作のリード曲。語り尽くせぬほど魅力的だ。冷静に聴くとイントロのサックスのテンションは常軌を逸しているし、シンセの類は煌めきまくり、リズムとベースの音圧はシャープ&タイトにキレまくり。一気に展開する1コーラスの構成美に圧倒される。この高質なトラックに乗せて可愛い女の子たちが歌うのだからこんなもん最高に決まってるやんけと開き直りたくなる。ヒップホップのマナーとしては普通のことかもしれないが、英語のフレーズの使い方や歌詞の符割が奇怪でカッコイイ。たとえば「イカレたタイムキーパー」の「た」の発音を捨てていたり、「脱ぎ捨ててしまえば」の「ぎ」にアクセントを置いて最初の「ぬ」をほとんど発声しない、とか。「正気じゃいられないくらい踊ろうよ」なんていうフレーズにも胸が熱くなる。この潔さは宇多田ヒカルのクールネスにも似て、最高にカッコイイ。


10_L'elisir d'amore
Googleによると「愛の妙薬」というオペラからの引用みたい。まあこの曲は良くも悪くも今風で、別にEspeciaじゃなくてもいいんじゃないのーアーティマージュのアーティストが歌えばええんちゃうーみたいな感じで、あまり感情移入できませんでした。


11_海辺のサティ(PellyColo Remix)
「ミッドナイトConfusion」のカップリングだった曲。原曲は可愛いキーボードのイントロが印象的かつ爽快かつアーバンな名曲だったのだが、このトラックはまったく別物。原曲の魅力をあえて削ぎ落とす自傷的な趣きで感心しない。


12_ミッドナイトConfusion(Pureness Waterman Edit)
この曲も原曲のアレンジのほうが好き。なんでこんな「カイリー・ミノーグの1000枚目のシングルのB面」みたいなモッサリした編曲にしちゃうんだろうなあ。元気よく「EYES ON ME♪」で始まるシングル・バージョンのほうが断然良いです。


13_くるかな
Especiaをアイドルと呼ぶことに抵抗があって、実際オフィシャルには「ガールズグループ」と称されているし、彼女たちがアイドルを自称することはあまりないようだ。その姿勢は正しいと思う。彼女たちはボーカル&ダンス・グループであって決して「アイドル」ではない。とはいえ、一般的には可愛い女の子が集団で歌い踊っているのだから「アイドル」と形容される事態は免れない。この「くるかな」はそんなジレンマを逆手にとったような「あえてアイドル寄りのやつ、一曲だけ入れておきました」という感じ。しかし、そのクオリティは現況の凡百のアイドルとやらのそれとは桁違いのクオリティ。モータウンを基調としていたおニャン子クラブのアルバムに入っていても違和感がないし、渡辺満里奈のファーストかセカンドに収録されていたとしても見劣りしない(サードの『SUNNY SIDE』はちょっと違う)。「雨上がりのあさがえり/仕事やすんじゃおっか」なんて可愛く歌われるとキュンとしますね、47才、夏。


14_アビス
往年のオリジナル・ラブみたいなサビメロをイントロに配していることからも自信を窺わせる。歌詞の舞台は再び南の島のビーチで、リリックもサウンドも、いかにもEspecia。キャッチーにして芳醇。ゴージャス&キュート。ピアノがジャジーでアダルト度アップ。この曲もほんと名曲で、スティーリー・ダンみたいに繰り返し聴くことになるだろう。


15_YA・ME・TE!(GUSTO Ver.)
この曲は既発シングルでこの冬によく聴いていた。どうやらバック・トラックは変わっていないようだ。ジャズ・ファンク風味のポップスとして世界に通用するレベル。だってこれジャミロクワイが歌ったら全英チャート1位になるでしょ(おれの洋楽観はジャミロクワイあたりで歴史が止まっている)。歌詞を見ながら聴くとけっこう大胆なアクセントで、カラオケで歌ったりするの難しいのだろうなー。聴き慣れている曲もアルバムで改めて楽曲の魅力を再確認。歌詞の世界や符割の不思議さ、可愛い歌声、飽きのこない楽曲。繰り返し聴けば聴くほど面白くなっていくのだから「ミッドナイトConfusion」「海辺のサティ」もオリジナル・トラックを収録してほしかったなーと思う。


16_Outro
グラビア・アイドルのイメージ・ビデオで肌色の下着つけたままシャワー浴びるシーンに使われるBGMのような、セクシーな終演の60秒。
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by kamekitix | 2014-06-07 15:16 | Review
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