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倉内太 『ペーパードライブ』

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名前は知っていたのだが、なんとなくceroとか片想いみたいな楽しさの押し売り的な仲良しサークルっぽいムード重視の軽音楽なのかなーという先入観があって敬遠していた、倉内太。
8月27日にサード・アルバムが発売され、ひょんなことから熱心に聴くことになった。思ってたのとぜんぜんちがいました。
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声質にメジャー感がある。特徴のある伸びやかな声。テレビCMでも歌えば、大衆の耳を惹くだろう。
コーラス・パートもすべて自分で歌っているようだ。その声色のバリエーションは実に豊かで、彼がボーカリストとして優れていることがわかる。
すべての楽器をひとりで演奏し自らミックスしたというDIY精神が暖かいサウンドを編んでいる。丁寧なハンドメイドの暖かさだ。

アレンジにも無駄がない。キャッチーなサビメロに至るまでの緩急を意識した展開。心地よく渋いコード進行&エヴァーグリーンなハーモニー&パンキッシュな破壊力&ブルース。それらの具材が絶妙の火加減で炒められた美味。

送ってもらっちゃった2年前のCD『倉内太と彼のクラスメイト - LIKE A RHYTHM GUITAR』と比較しても、ポップス・クリエイターとしてのコツを体得したかのような成長を感じさせる新作『ペーパードライブ』。



しかし、倉内太はそんな表層的な要因で簡単にブレイクなんかしないだろう。
彼のほんとの魅力は、底知れぬ闇を感じさせる歌詞にある。
過去のインタビューを読むとドラッグや宗教、家庭環境などの話題が多く、かなり屈折した人格形成を思わせる。

 アルフォート一枚一枚に描いてある
 あの船に乗って 初めてその歌を聴いたとき
 僕は目の前のコーヒーに夢中

 (「ひまつぶし」)

どの詩も良く言えば幻想的でイマジネイティブ。悪く言えばフワフワしていて尻切れトンボだ。
共感されるような恋の風景なんかぜんぜん描かれないからJ-POPとしての汎用性は低い。

「僕のことが思い出せない」「見えない人たち」「人じゃない何か」「目に見えないお化けいそう」「言葉を無くした頃にようやく」「霊感を使って」「僕には分からないものを聞きとってる耳」。
奇妙な擬人化や病み上がりのような視線がデリケートな世界観を照らしだす。

個人的に気になったのは女の子の顔を形容するのに「人類滅亡」という言葉をチョイスしている点だ。「人類」という言葉は、このアルバムでもう一ヵ所登場する。たまは「人類」という言葉をポップスに昇華したが、倉内太の使う「人類」はもっと神経症的だ。

ポップでキュートなサウンドと弾けるような歌声で描かれる、禁忌に近い精神世界。
このギャップが倉内太の魅力のひとつなのだと思う。

さて、そんな興味深い名盤『ペーパードライブ』。
大阪でのリリースパーティーにトーク・ゲストとして参加させていただくことになりました。
私はおもに「ロリータ・コンプレックソ」という曲に登場する店「PePe」について語ることになると思います。

【倉内太3rdアルバムリリースパーティー】
◆日時:2014年10月5日(日)19:30
◆会場:Loft PlusOne West(大阪)
◆出演:倉内太、松本亀吉、キングジョー、岩淵弘樹

くわしくはこちら。http://www.loft-prj.co.jp/schedule/west/25934
みなさんぜひ。

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終了しました!
すさまじいイベントでした!
楽しかったです!
台風なのにお越しいただいたみなさんありがとうございました。
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(キングジョー、倉内太、松本亀吉)
ぼくはちょっと喋りすぎたかもしれない。

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by kamekitix | 2014-10-05 19:47